|
春学期の恒例の行事が、はじまった。まず、留学生のホームステイ受け入れである。トップをきって来日するのは、蔚山〔ウルサン〕大学の学生たちである。
蔚山は、現代〔ヒョンデ〕自動車の企業城下町である。蔚山大学校は、この現代自動車がスポンサーになって発足した私立大学で、県立大学とも交流している。
県大を訪れた学生たちは、みな日本語学科に在籍しているから、言葉に不自由はない。浜田市民の多くの方々が、ボランティアーでホームステイに協力してくださり、かれらを受け入れてくださる。こうした中で、県大の教員が、協力しないわけにもいかない。毎年のことながら、何人か立候補することになる。我が家も、その一人である。
問題は、家内が浜田にいるときと、そうでないときで、受け入れ方針が異なる点である。ぼくが一人でいるとき、女子学生を受け入れるわけにはいくまい。以前、これは、やはり交流校である慶道大学の学生だったが、ぼく一人のときだったので、男子二人を受け入れた。このときの一人が、現在も県大に在籍している尹熈竣〔ユンヒチュン〕君である。語学研修で訪れた県大の印象が良かったせいか、あるいは我が家のもてなしが良かったせいか、翌年、県大への留学に応募して、来日する運びになったわけだ。尹君は、ぼくの指導ゼミに入っていた。
こういう偶然のような嬉しい出会いがあるから、面白いものだ。
さて、今回の蔚山大の二人の学生だが、一泊二日の滞在のあいだ、どこへ連れていくべきか困った。なぜなら、天気が最悪だったからだ。一日めは、曇りときどき雨という天気で、石正美術館へ行ったり、海辺で景色を眺めたりで、かろうじて過ごせた。翌日は、浜田市の下村さん主催の「歴史紀行」の遠足で、江津市内を歩き回る予定にしていたのだが、天気予報は大雨で、雨天中止の公算が高まった。
大雨と言えば、昨年も蔚山大の女子大生を二人ホームステイさせたときがそうだった。篠つくような豪雨のなか、石見銀山へ連れていったものだった。
ぼくたち夫婦は、明日の予定で頭を抱えた。どこへ連れていったものか、名案が浮かばない。
さんざん考えたあげく、三瓶自然館、通称サヒメルのことを思いついた。「地域文化と歴史」という授業で、縄文時代を取り上げる際、地域に密着した遺跡として、引き合いに出す場所だ。
あそこなら、博物館になっていて、館内は広いし、外が雨でも時間をつぶすには困らないだろう。
そんなわけで、やや遠いが、三瓶自然館まで足を延ばした。
別館にあたる埋没林遺跡も、迫力じゅうぶんで、学生たちも面白がってくれた。プラネタリウムを見るのは、かれらには初めてで、ぼくたち夫婦もなん十年ぶりだった。
サヒメルの展示も、以前より充実している。最後に日韓関係にかかわる新発見があった。竹島である。
竹島が、絶滅したニホンアザラシの最後の繁殖地(コロニー)だったとは、初めて知った。竹島の最後のアザラシの剥製が展示してある。韓国では、独島〔ドクト〕と呼んで、占拠しているが、ニホンアザラシが棲息していたということは、もともと日本領土だった証拠かも知れない。
夕食後、敗北に終わった日露バレー戦を見てから、かれら二人を大学の交流センターの宿舎へ送りとどけたあと、ぼくたち二人とも、すっかり疲れきっていた。
これも、日韓親善のためだ。我が家特製のキムチを、いかにも嬉しそうに頬張ってくれた二人の笑顔は、いい思い出になるだろう。
|