ツーリングの楽しみ

  豊田 有恒

 島根県立大学へ来ることが決まった年のことだ。還暦を迎えて、なにをしようかと、家内と相談した。かねてから懸案になっていた北海道ツーリングへ行こうということになった。

 わたしのほうは、若いころからバイクでツーリングをしているから、北海道だけでも五周は走っている。だが、家内は、初めてなので、まえから連れていけと言われていたのだった。

 そもそもバイクに乗りだしたのは、十八才のときのことで、家のスクーターを持ちだしたのが、最初だった。それから、ほぼ二十年ほどブランクがあり、雑誌の企画で乗る機会があったため、バイク熱が再燃した。女でもギャンブルでも、中年になってからのめり込むと恐ろしいというが、とうとう日本一周する羽目になった。

 予約もしないで、当てずっぽうに走るのが、バイクの魅力である。キャンピング・ガスで自炊して、テントで寝ることもあれば、温泉地では名旅館に泊ることもある。あんがい便利なのが、いわゆる公共の宿である。

 さて、夫婦そろっての超ロングツーリングは、東京から自走して仙台へ向かい、フェリーで苫小牧まで行き、あとは勝手きままに走るという予定になった。それから十日ほどかけて、時計回りに北海道を一周して東京に戻った。

 浜田へ来るまえに、バイクを買い換えた。それまで愛用してきたのは、同じモデルを、モデルチェンジのたびに三度も乗り変えたのだが、アフリカツイン750Rというタイプ。パリ〜ダカール・ラリーに登場したマシンを乗りやすくして市販したオフロードのナナハンだ。ところが、同じライダーの家内や娘から異議が出た。シートの高いモデルだから、年齢からみてもう無理だ。転んだりしたら、どうする。などと脅かされたあげく、短足の悲しさで、もっと足つきの良い、シートの低いバイクということになり、泣く泣く手放したのだ。

 着任するや、最初の夏休みに、バイクを運んできた。家内のほうは、東京〜浜田を行ったり来たりだから、バイクは送らせることなった。

 バイクは、コーナリングを楽しむものだから、真っ直ぐな高速道路を走っても、いっこうに面白くない。四輪のドライバーには評判の悪い国道9号線だが、ライダーにとっては、それなりの楽しさがある。海岸あり、山側に回りこんだコーナーあり、トンネルありと、変化に富んでいる。

 先日、家内といっしょに9号線から立久恵峡に寄ってから、三瓶山を回ってきた。

 一人では、186号線は、何度も走っている。けっこうワインディングになっていて、走って面白いのだ。浜田道で行くより、広島へ行くのも、ずっと楽しめる。

 いよいよ初夏のバイクシーズン到来で、毎日うきうきしている。

 



写真提供
モーターマガジン社
GOGGLE
2002年11月号より
撮影 松川 忍